創意工夫して描く、スプレーアートの描き方いろいろ

絵描きはあまり、自分の制作技法を人に教えてはいけないと言われることがあります。独特の透き通る画風で有名なパリの寵児・藤田嗣治は、自身の作品の「乳白色の肌」の秘密を生涯にわたって一切語りませんでした。西洋画壇で絶賛された絵のノウハウなんてのは、そう人に教えられたものではなかったでしょうね。

ところでスプレーアートをしていると、「スプレーで描いているなんて信じられない!」と嬉しいお言葉を頂く場合もあるのですが、

このご感想にはある面で少し距離を感じるというか、ただ単にスプレーアート自体が知られてないだけで、絵の描き方としてはメジャーではないということを痛感します。

出来上がったものを見ても、筆を使った描き方と比べて、制作過程はイメージされにくいのではないでしょうか。

より作品に親しみを持って頂くためには、ちょっとでも制作過程を見知って頂いたほうが良いかな、と考えまして、この記事では少しだけ、自分が普段どんな道具を使い、それをどんな表現に使って絵を描いているのか、書いていきたいと思います。

1.スプレーアートの道具

スプレーアートでは、身近にある道具を使って絵を描きます。

何の道具を選ぶか、それをどのように使うか考えるのもスプレーアートを制作する上で楽しいポイントのひとつです。

僕がよく使うのはこんな感じ。↓

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ヘラ(スクレイパー

一旦吹き付けたスプレーを、乾かす前に「剥がす」作業に使います。写真にあるような油彩用のペインティングナイフ等も併用します。

この作業、基本的にスプレーが乾き切る前に描き上げなければならないので、一発勝負です。 

また、スプレーを上から吹き付けてしまえば細かいミスは修正可能なこともありますが、二度も三度もスプレーを吹き付けるとそのたびに画面が荒れます。

大きく画面に描いた山の稜線がちょっとでも気に食わなければ、修正は難しく、そのままごみ箱行きになってしまうことも。

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緊張する~

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道具としては、僕が良く使うのは金属のヘラで、しなりが絶妙に自分の手にフィットするものを選んで使っています。人によってはプラスチックのヘラなどのほうが自分の表現がしやすい、という場合もあるかも知れません。

丸い蓋

スプレーアートでは定番の道具です。

絵の中にとても綺麗な形の真円があるのを見て、「あ、これスプレーアートだ」なんて思う人もいるんじゃないでしょうか。

そんなこともあるので僕としてはあんまり丸蓋に頼るのは嫌なのですが、画面の中にひとつあるとバッと絵が引き締まるのも事実です。

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水平線や地平線、太陽の光の放射を描く場合などによく使います。

ただマスクするだけではなくて、光を表す色を吹き付けたいときはちょっと吹き付けるときの画面からの距離を変えてみたりすると表現が変わってきます。

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型紙(ステンシル)

木材家具などに文字を付けるいわゆるステンシルアートは最近DIYで人気ですね。

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アルファベットなどであれば、最近はセリアのような100円ショップでも便利なステンシルシートが売ってます。

セリアほんと便利だよね!!

また、自分で好きな型をつくれば、さまざまな表現が可能です。スプレーアートをする人の中には、非常に複雑な型紙を複数枚つくり、何層もスプレーを重ねることで絵を仕上げていく人もいます。

僕の場合は、風景の中に動物の絵柄をワンポイントで入れることがあります。

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動物と言いながら参考写真は人 

動物の絵を模写したものをアートナイフで切り取り、制作した型紙にスプレーを吹き付けるという流れです。

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アイディア次第でさまざまな表現を増やすことができる作業です。

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この他にも世のスプレーアーティストによく使用される道具は色々あります。

 スポンジとかチラシ・新聞紙とか、ラップとか、紙の欠片とか。

基本的に何をどう使っても大丈夫。スプレーアートを始めてみたい方は、自分の出したい表現を探しながらいろいろ試してみましょう~。

2. スプレーの吹き方いろいろ

ノズルを押したときにスプレー缶から噴射される流体は、基本的に距離が遠いほど広がる性質を持っています。つまり、1プッシュで噴射されるスプレーの量が一定だとすれば、距離によって、画面(紙やキャンバス)への塗料の当たり方(広がり方)は異なることになります。

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距離によって塗料の当たり方は異なる。

実際スプレーするときは、重力による落ち方も計算に入れておくと良いでしょう。

一般的に、プラモや木工家具などにスプレー塗装をする場合、きれいに塗装するコツとして「塗装物と一定の距離を保つこと」が推奨されますが、

スプレーアートでは逆に、このスプレー距離(画面までの距離)を故意に変化させることによって表現の幅を膨らませることができます。

画面の近くで吹けば強い光。

遠目に吹けば淡い光や星空。

といった具合です。

距離だけでなく、スプレーを吹き付ける「方向」によっても絵の流れ、勢いが変わってくるでしょう。

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 遠目に吹いて星空を表す様子(わかりづらい写真ですね)。

星については、ペインティングナイフに塗料を付けて弾く、というやり方をするときもあります。その場合は弾く方向によって天の川のような星の流れをつくったりできます。

また、スプレーは残量が残り少なくなってくると噴射にムラができ、ダマが起きやすいですが、これも使いどころによっては作品の味とすることができます。

噴射ムラを好きなタイミングで自在に扱うためには、異なる残量で同じ色のスプレー缶を複数用意しておかなければなりませんが、、、

実際、僕の場合は残量が残り少ない白や青色などを捨てずに手元に残しておいて、夜空の表現に使ったりすることがあります。

まとめ

ふだん一人であれこれ工夫してやってることを、改めてひとつひとつ言語化しようとすると、大変ですね。 

他にも、スプレーの乾燥時間を利用したグラデーションの作り方などを紹介しようと思ったのですが、疲れてきたので長くなってきたので今日はここまでです。

スプレーアートという手法は比較的新しい絵の描き方です。

そのため、スプレーアートの描き方を体系化していたり、この道の大家と呼ばれるような方はあまりいないような気がします。

それぞれ有名なアーティストはたくさんいらっしゃいますけどね。

その分、好きにやればいいんでしょうけど!

この記事で、スプレーアートをこれまでより少しでも身近に感じて頂けたら幸いです。

ではでは

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追記

この記事で記載した写真の一部はYouTubeにアップしている制作風景から抜粋したものです。よろしければ以下のリンクからご覧ください。

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